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東京高等裁判所 昭和24年(新を)2007号 判決 1949年12月20日

被告人

立松光治こと

竹沢盛雄

主文

原判決を破棄する

被告人を懲役一年六月に処する

原審に於ける未決勾留日数中九十日を右本刑に算入する

訴訟費用は被告人の負担とする

理由

第一点について審按するに原審第三回公判調書に「檢察官は昭和二十四年五月四日附起訴状を朗読した裁判官は被告人及弁護人に対し右起訴状記載の公訴事実を告げた上被告事件について予め陳述することがあるかどうかを訊ねたところ被告人は事実は其の通り相違ありませんと述べた」と記載してあつて判事が被告人に対し刑事訴訟法第二百九十一條第二項及刑事訴訟規則第百九十七條第一項所定の事項を告げた形跡がないことは論旨指摘の通りであるが原審第一回公判調書によれば檢察官が起訴状を朗読した後裁判官は被告人に対し右所定事項を告げたことが明であるから同一訴訟手続において重ねて同一事項を告げる必要はないのみならず元來右各條の規定は被告人の保護に欠ける所がない樣にする爲の規定と解するのが相当であるから裁判官が該事項を告知しなかつたとするも之が爲公判手続の効力を左右するものではない。

同第二点につき按ずるに刑事訴訟法第三百三十五條第一項に依り有罪の判決に法令の適用を示すには如何なる事実に如何なる法令を適用したかが明瞭に分る樣に記載しなければならない然るに原判決はその理由中に事実として「昭和二十四年五月四日起訴状記載の公訴事実、同年一月二十六日起訴状記載の公訴事実と同一であるから爰に之を引用する」旨、又法律の適用として刑法第二百三十五條、同二百四十六絛第一項同四十五條同四十七條同十條同二十一條、刑事訴訟法第百八十一條第一項」と記載してあつて原判決認定のどの事実にどの法條を適用したかが明瞭でないから此の点において原判決には理由不備の違法があり破毀を免れない。

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